ボストン美術館で見るべきおすすめ作品と見どころを紹介!(日本美術中心)

 アメリカマサチューセッツ州、ボストン美術館に行ったなら、

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 こちらの路線が王道であることはわかっています。しかし。私がなぜボストンまではるばる出かけて行ったか。それは、ボストンにある日本美術が見たかったからなのです。そしてボストン美術館の東洋部門、アジア美術は、世界有数。日本美術に限って言えば、日本以外ではNO.1。太平洋を超えて渡った正倉院と言っても過言ではない。

じかに見たもの、日本へのお里帰りで評判だったものなど、これぞ、のおすすめを紹介していきます。

日本美術  

風仙図屏風 江戸時代 曾我蕭白

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この絵、里帰りするんですね!慎んで追加。

今でこそ若冲・蕭白と言えば大騒ぎですが、一躍脚光を浴びたのは1970年代、辻 惟雄(1932- )先生の著書「奇想の系譜」がセンセーションを巻き起こし、紹介された江戸キッチュ、エクセントリックでかっ飛んだ日本美術の、亜流とも濁流とも取れるダイナミズムあふるる作品群は、見る人の度肝を抜いた。黒い渦巻きは、竜巻。中央の男性(陳南仙人(龍を呼び雨を引き寄せる)とも呂洞賓仙人(中国で一番人気のヒーロー仙人さま)とも)は剣をふるって龍をあやつり、天井の水門を開かしめ、干ばつから人々を救うのです。風のあまりの勢いに2人の男はひっくりかえり、右手奥の草むらにはウサギが2匹。かろうじて立っている。我々の潜在意識にある「日本美術」の固定概念を根こそぎ揺るがす曽我蕭白。「『画』が欲しいなら俺に頼め。『絵図』を求めるなら(丸山)応挙に頼め。」と冗談交じりに語ったとか。江戸時代のサイケデリック、横尾忠則。破天荒な無頼の絵師は大家として京都でその生涯を終えました。享年52。早くに天涯孤独の身となり、己の才能だけを頼りに突っ走った一生。死因は伝わらず、妻についてはわからない。幼い息子を亡くした4年後のことです。

観音菩薩立像 飛鳥時代

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岡倉天心(1863-1913)。明治期、西欧に追いつけ追い越せの時代に、それまでの日本文化は大層軽んじられていた。日本の伝統美と文化の素晴らしさに目覚め、気づき、大切さを日本に世界に知らしめた方。天心は1904年よりボストン美術館の東洋部門の初代部長となり、その際、収集した仏像です。この像、小さい。22.5cmの金銅仏。仏教が伝来し、で、仏様を信じるにはどうすればいいのか。いきなり巨大なお寺や仏像を作れと言われても敷居が高い。小さいものでいいんですよ。とこのサイズの金銅仏は盛んに作られ、お家の中で大切に祀られていたのでしょう。

 

大日如来坐像 平安時代

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大日如来は密教の中心。密教における大宇宙を現わす仏様。1149年製作。「大日」ですから光り輝いている。そして、もともと、仏様はどんな場所で、どんな風に置かれていたのか。

 仏教美術展示室 では

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中央が大日如来。向かって左が阿弥陀如来。右は大日如来。

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そして四隅には四天王2体、不動明王、毘沙門天が控える。

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ほの暗いお寺の中。仏様が薄明りの中、厳かに、遥か遠くから来られ、お伴の者はみ仏を守りに立ち、鎮座している。をアメリカで、ボストンで、体感できる展示になっています。「少しでも日本の寺院を訪れたときに近づける」ため、椅子に腰かけて仏様と対面できます。

 

弥勒菩薩立像 鎌倉時代 快慶

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この像、有名。何度か日本にお里帰りしていますね。鎌倉時代の仏師といえば、運慶・快慶。そして快慶は圧倒的に資料が少なく、運慶に比べ語られることが少ないのだとか。むっちりした肉体表現、流れる着衣のラインは快慶のお家芸。内部に経典が入っていて(もちろんこの経典もボストン美術館の所蔵品)これにより製作年が1189年と特定された。元は奈良の興福寺にあった。 岡倉天心が購入(ああ、売り払ったりしないでほしかった…)。 ボストン美術館 が1920年に遺族 より 購入。

 

金銅聖観音坐像 鎌倉時代 西智

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この仏像も超絶国宝級。鎌倉時代の金銅仏の最高傑作の一つと呼ばれている。保存完璧。「西智」検索かけてもさっぱりヒットしません。もとは滋賀の金剛輪寺にあった。(ああ、売り払ったりしないでほしかった…←以下全部同じなのでこれで最後にします)台座に製作年が1269年であること、作者が西智であることが刻まれています。地方豪族の栄華のありようと、運慶快慶以降の仏師の仕事ぶりを見て取ることができる。蓮の花を型どった台座、仏様のバックには光輪が立ち、オーブが、オーラが燃えている。細工の流麗さ。精巧さ。

 

こんなかんじで

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近くに置かせていただき、感激。

 

普賢延命菩薩像 平安時代

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息を呑んでしまいます。赤と白の房が下がる天蓋の下、仏様と白象の白い肌のなまめかしいこと。コスチュームとアクセサリーの華麗なこと。象は牙にもお化粧してる。口紅を塗っている。ネックレスが揺れれば、ひときわきらめいたことでしょう。「延命」ですから、命を延ばしてくれる仏様。頭飾りには5人に小さな仏様。3つの頭を持つ像と、足元は法輪の下に8頭の小象。四天王が周りを固める。象の異形の表情と、仏様の伏し目がちの目線が、いっそうこの絵を幻想的なものに。

 

龍虎図屏風 桃山時代 長谷川等伯

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桃山時代の天才、長谷川等伯絶頂期の屏風。「松林図」は東京国立博物館で。そして「龍虎図」はボストン美術館で♪みなぎる余白。ドラマチックな画面はとりすましたそれまでの日本の絵にはない個性で、当時のアバンギャルド、最先端。一陣の生温かい風が吹き、暗雲垂れこめ、龍が雲間からゆっくりと姿を現す。虎と龍の目が合う。新たな時代の幕開けとともに。6双だからざっと3畳。が2つ。

ちなみにボストン美術館のホームページから確認できる長谷川等伯は6点。

 

乗興舟(断簡)江戸時代 伊藤若冲

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これ。若冲なんです。極彩色の鶏とか鳳凰とかオウムにしようか迷ったのですが。それも「拓版画」。石碑とかに墨を塗って石碑の魚拓を取る、あれ。ですのでモノクロで、色は反転します。黒は白、白は黒と読み替えなければいけません。ええトコの隠居、若冲が淀川下りをしたときの景色を絵巻物にまとめ、「断簡」つまり一部がボストン美術館の手に渡った。若冲の実験は、碁盤の目のように、正方形のマス目を埋める「樹花鳥獣図屏風」は有名ですね。あれは、若冲の実験の一部だったんだ。この絵も、モダンですね。

ボストン美術館のホームページから確認できる伊藤若冲は37点。

 

松島図 江戸時代 尾形光琳

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松島には行ったことありますが。曇りだったのでしょうか。こんな色とりどりではなかったような…。空は、金色。波も金色。ゴールド。うねる波しぶきは白。同じくアメリカはワシントンDC.には俵屋宗達の「松島図屏風」もありまして、江戸のビッグネームの松島の屏風が2双、なぜかアメリカの東海岸にある。宗達の絵も金を基調としており、時代としては宗達17世紀、光琳18世紀なので、光琳はもちろん宗達の絵を知っていたのでしょう。フェノロサが手に入れた、外国人が初めて手に入れた日本の絵の傑作。

ボストン美術館のホームページから確認できる尾形光琳は24点。俵屋宗達は11点。

 

松千歳の契り 江戸時代 鈴木春信

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 驚くなかれ、ボストン美術館のホームページから確認できる鈴木春信は666点。絵や彫刻と違って浮世絵は単価も安いし、モノも多い。(浮世絵1枚は当時のソバ1杯分だったとか)浮世絵の祖が岩佐又兵衛(ボストン美術館所蔵1枚)・菱川師宣(ボストン美術館所蔵135枚)なら春信は錦絵の祖。甘く、夢見る少女のような画風は春の夜の風のよう。抒情と雅やかな気品に満ち、この絵も松・梅・鶴・恋する2人とめでたいものづくし。

 

雛形若菜の初模様 あふきや内 たき川 おなみ めなみ 江戸時代 鳥居清長

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 今で言うモデルさんや女優さんの宣伝写真。最新ファッションの発信でもあった。着物の柄も帯の文様も、新柄をいち早く書き込み、絵は一層リアリティを増す。鳥居家の、清長の本業は歌舞伎の絵看板屋さん。副業の浮世絵で、歴史に名を残す。清長といえば8等身美人。なよなよくねくねしたところのない、長身で、堂々たる体躯。きりっとした表情とすっくと立つ清長美人は見ていて小気味よい。サモトラケのニケやミロのビーナスが反射的に頭に浮かぶのです。スケールが大きい。

ボストン美術館のホームページから確認できる鳥居清長は763点。

 

稀に逢う恋 江戸時代 喜多川歌麿

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歌麿の絵を見ていると、この人リアルでは相当非モテだったんだろうなあ。との凄みを感じます。歌麿美人のどれもこれも、女性を偶像化し、自分には手が届かないものをあがめたてまつり、女のすべてを描いて描いて描きまくる。自分は地べたに這いつくばり、女性は高みへ、高みへと。凄惨な大年増の大首絵なんかも、いいんですが、この絵は初々しい武家娘。バックの雲母摺も、ピンクです~。

 ボストン美術館のホームページから確認できる喜多川歌麿は1,161点。

 

絵や屏風は1点ものですが浮世絵はある程度の数刷って売るから、同じ絵柄の浮世絵が世界中の美術館博物館に点在している…はよくある話。1枚1枚状態が違い、刷りが新しいと色もよく付く。見比べる楽しさはあるものの、同じ絵、東博も持ってる…。ことも多い。写楽も北斎も広重も、質・量とも所蔵量は圧倒的。…しかし、やっとのことでたどりついたボストン美術館の展示は、私が行った時には、実は寂しかった…。美術館内ではテーマに沿った特集展示があるから、浮世絵をやれば圧巻なんだろうな。時々開催される日本での「ボストン美術館」の名のつく里帰り浮世絵展は、必見!

ボストン美術館のホームページから確認できる東洲斎写楽は95点。葛飾北斎は1,829点。歌川広重は6,137点。

 

行ったときの浮世絵は

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地味でした…。でも

 

月百姿玉兎孫悟空 江戸時代 月岡芳年

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この絵が展示されていたのです!満月をバックに見栄を切る孫悟空の鮮やかさとカッコよさに一目ぼれし、ずっと憧れていたので、感激。展示のお題は「猿」。所蔵の日本の作品の中から猿が描かれているものをまとめて展示しており、ミニコーナーでしたが、見ごたえあり!

ボストン美術館のホームページから確認できる月岡芳年は547点。

 

白絲威鎧 江戸時代

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淀稲葉氏伝来。黒・白・金・朱の色のハーモニー。

 古い鎧は糸がボロボロでありがたく珍しく大切なお宝とはいえ、目にはあまり楽しくない。この鎧は古さも程よく、りりしい武者ぶりがしのばれます。兜は14世紀の名品を使用しているのだそう。

展示は

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鐙や刀や鍔と一緒。隣には

 

芥子図 江戸時代 宗達派

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赤いポピー、白いポピー。きれいだ…。優美だ。グレース・ケリー連想しちゃった。琳派の画家筆。ただし署名も落款もない。加賀百万石前田公が天徳院(金沢のお寺)に寄進したもの。花びらの1枚1枚が薄く、金箔が透けて見えるような。

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美術館の画像と、自分の目で見た実物・自分で撮った写真ずいぶん違う。特に金箔。そして花びらの色。行ってみなければわからないものです。

 

1階(アフリカ美術)と2階(日本美術)の間の階段

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和を感じさせる工夫が。

 

天心園

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ボストン美術館の一角、入場料なしで入れる日本庭園。4月から10月、土曜日~火曜日10:00~16:45水曜日~金曜日10:00~19:30開演。荒天時は閉園です。リンデ・ファミリーウィング2階のダフネとピーター・ファラゴ展示室の窓から見ることができる。2015年に日本テレビの寄付により改修されたばかりで、キレイ。15世紀の禅寺を思わせる枯山水様式。熊手で白砂を引き、できた模様で水の流れを表現する。

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私が行った時には、お客さん待ちのタクシーの運転手さんでしょうか。ベンチでお昼寝してました。

作庭は、「昭和の小堀遠州」こと中根金作。ああ、どこまでも一流どころばかり。師いわくこのお庭「ニューイングランドの山々、海、島々の本質を表現しようとしました。」(1987)ホント、ボストンは陽光柔らかく緑映え、良いところ。

 

日本美術以外

ボストン美術館をガイドブックで見れば、取り上げられる作品はどうしても印象派などのヨーロッパ美術に偏る。ヨーロッパ・日本以外で良かった展示や目玉の所蔵品をご紹介します。

 

中国美術

有名なのは

搗練図 北宋時代(12世紀) 伝徽宗皇帝

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北宋の暗君、茫洋君にして超一流のアーチスト、徽宗皇帝。絹を打ち、紡ぎ、縫い、伸ばす。原本は唐時代。をリライト・コピーしたのがこの絵巻。筆が徽宗か、宮廷画家によるものか、決定打に欠き、断定できない。唐の風俗をパーフェクトに再現できているかには疑問符がつくのだそうですが、髷の形や髪飾り、うすものをまとい袖をたくしあげ、萌えてしまううなじ。女の手仕事のさまの綿密な描写で、中国王朝絵巻をまじかに感じてみたいなー。このコスチュームのシルエット、ナポレオン時代と同じ!

 

展示でうっとりしてしまったのは

 

観音立像 北周または隋時代(6世紀)

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風を受け(衣の袖がたなびいている)手にお持ちなのは、蓮の花ではなく、レンコンなんですね。お召し物の素晴らしい事。全身にアクセサリーを飾り、白い仏像なので清楚でありながら慈愛と気品に満ちて。2.5mの巨像なので、私どもを見下ろしていらっしゃいます。アルカイックな微笑にノックダウン!純粋に見た目だけなら、この仏さまが一番かなあ。

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風の流れが、横からの方がよくわかりますね。

左に見えている絵は

姨母育仏図 明時代(16世紀)(壁画)

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「姨」は「妻の姉妹」。ブッダ様のお母さんはブッダを産んで7日めに亡くなってしまい、妹のプラジャーパティーがブッダを育てた。276.8 x 345 cm 。お義母様より側近くの侍女に目が行ってしまいます。きれいどころ揃いです。壁をはがして持って帰るなんて。そしてここまで元の形に近づけることができるのだ…。淡いグリーンのトーンが上品で、状態もかなり良い。

 

同じお部屋には

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 六朝時代の空飛ぶミュージシャンや

 

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唐の時代に石に刻まれた釈迦三尊像の右側の仏さま。

(一番美形だったのでアップで。)

 

菩薩座像 東魏時代(6世紀)

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洛陽郊外の名刹、白馬寺から出土したもの。白馬寺は1世紀に創建された文献で確認できる中国最古のお寺で、中国では超有名。近くに中国三大石窟(莫高窟・雲崗石窟・龍門石窟)の1つ、龍門石窟があります。上の「観音立像」も6世紀。同じ中国、たいして年代も違わないのに、ここまで様式が違うとは。「観音立像」が清艶なら、こちら「菩薩座像」は清柔。冠が高く、より一層お顔を面長に見せ、足を交差させたりこの像のように片足を膝に乗せ、シルエットを三角形に見せるスタイルは、中国の魏の時代の仏像の目立ったスタイルです。裾のドレープのひだひだとスカート?のプリーツがはっきりわかりますね。

 

展示は

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ライトを浴びて、テラコッタ色。

 

中国陶磁

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浮世絵が西洋の度肝を抜き、世界を席巻したというなら、中国の陶磁器の焼きしめた白い肌と染付の色・模様・完成度はもっとずーっと前から、世界中の羨望の的でありました。もちろん、ボストン美術館にも、陶磁器、揃ってますし。

青銅器

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 中国の青銅器は、古代の人々の祈り。今みたいに世界中の様子が瞬時にわかるはずはない。そして人の命はもろかった。見えぬ未来に平穏無事と五穀豊穣の願いの切実さは、今の私たちのお寺や神社や教会での祈りとは、きっと全然、違うんだろうな…。

 

韓国陶磁

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韓国陶磁の白さも青さも(青磁って薄緑色だから緑も、と言うべきかも)上品で優しく女性的で、大好き。2012年にオープンしたばかりの新しいコーナー。

 

南アジア(インド、ネパール、スリランカなど)美術

観世音菩薩

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インド語では!?「アヴァローキテーシュヴァラ(Avalokiteshvara)」とおっしゃるのです。11世紀。パーラ朝。パーラ朝は仏教と芸術を厚く保護したため、この時期のインドの仏像はとりわけ見目麗しい。同じ仏様で、インドと日本、なぜにここまで違うのか。日本の仏像にセクシーさ、皆無、は言い過ぎでも、インドと比べたら雲泥の差だものなあ…。ミケランジェロのダビデも良いですがインドの優男にも、もちろん心惹かれます。


東南アジア(インドネシア、カンボジア、ミャンマー、タイ、ベトナム)美術

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下段、台に乗った白い水差しは(油さしだったのかもしれないとのこと)

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ベトナム・李朝時代、11~12世紀のもので、完全無欠、割れも欠けもなく残った奇跡の品なんだとか。注ぎ口、細いし、長いし…。よくも残ってくれました。もともとは白磁だったのでしょうか。経年で、韓国の白磁とかも貫入が入りますが、土が違い、釉薬ももちろん違うのでしょうから、同じような技術で作り上げた陶磁器も、今見るとここまで違う。

 

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仏像(仏教にいてもほかの宗教にしても)や彫刻って、中国、日本と東下するほどにインドのエロティックさは薄まっていくような。つまり東南アジアは中継地点。は残しつつもより温かみ、柔らかさが増すような気がします。そして石も、材料も違うのかなあ。野ざらしの仏様が多かったのかもしれない。粗削りっぽいものが多かった気が。表情もわりと固い。

 

イスラム美術

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13~14世紀ごろのペルシャ(今のイラン)のタイル。

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 装飾にかけてはインドに負けじ劣らず、百花繚乱の華やかさにに目を奪われるイスラム芸術。ムスリムの教えは偶像崇拝ご法度なので、かわりに幾何学模様や花や蔓の文様が生み出され、神の姿を見せるのではなく、いまここに神がいることを感じる、感じさせる。制約が、イスラム芸術の独自の開花のヒミツなのですね。

 

メソアメリカ美術

オルメカの仮面

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中央の白い仮面が「オルメカの仮面」。紀元前6~8世紀ごろ。メキシコ。ヒスイ。副葬品ないしはツタンカーメンのマスクみたいな死者の仮面。葬儀の儀式において仮面は火に投じられ、白変するのです。マヤやアステカに先立つ、中央アメリカの最古の古代文明が、オルメカ。15世紀、スペインのコロンブスが発見!?するまで、独自の発展と繁栄を重ねてきた。

アメリカの美術館なのですからアメリカ生まれの古今東西の展示にも大きなスペースが割かれています。地元、アメリカ国民の方々が一番熱心に見て回るのは、もしかしてアメリカ美術のブースなのかも。

 

アフリカ美術

馬上の統治者

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16世紀、アフリカ。正装の戦士。 凝った羽毛の冠、貝をあしらった豪壮な襟飾りは身分の高さの象徴。アフリカ・ベニン王国(現在のナイジェリア南部)の国王の副葬品。ベニンではなく、その周辺の王の像ではないか、との説が有力。

アフリカンアートは、複雑に絡み合い、幾多の文化の刺激や影響から全く離れたところに源流があり、孤高にオリジナルであるところがユニークすぎる存在。DNAの違いを感じさせる作品ばかりです。

 

まとめ

ボストン美術館は広大で、観光客が集中する展示スペース以外にも心惹かれる展示は必ずあります。所蔵品の展示のみならず、通路や階段などにも工夫がこらされており、はるか昔に作られ、不思議なご縁でアメリカのみやびなる都、ボストンに世界各地からやってきたお宝の故郷を感じさせる仕掛けがたくさん。機会があればぜひ、行って、見て、楽しんでください!!

 

おまけ(ミュージアムショップでのお買い物)

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記念に。と買った本。ボストン美術館の所蔵品のジャンル別のガイドブックです。中国、日本、韓国。全部英語。写真を手元に置いて眺めることができるのはありがたい。コレクションナンバーも入っているので、ボストン美術館のホームページから番号入れれば作品のページにダイレクトに飛べるのがありがたい。オンラインショップでも購入可。日本にも発送可です。

 

ちなみにこちらのMFA Highlightsシリーズは全15種類。各19.95~24.95ドル。(日本芸術の本が一番高い!気合入ってます!)

  • American Painting(アメリカ絵画)
  • American Decorative Arts(アメリカの装飾(家具・食器など))
  • Native American Art(アメリカ先住民芸術)
  • European Painting and Sculpture after 1800(1800以降のヨーロッパ絵画と彫刻)
  • European Decorative Arts(ヨーロッパの装飾)
  • Arts of China(中国芸術)
  • Arts of Japan(日本芸術)
  • Arts of Korea(韓国芸術)
  • Classical Art(古代ギリシャ・ローマ芸術)
  • Arts of Ancient Egypt(古代エジプト芸術)
  • Contemporary Art(現代アート)
  • Photography(写真)
  • Musical Instruments(楽器)
  • Textile and Fashion Arts(織物とファッション)
  • Conservation(研究成果や過程などの一般客向けの紹介)

ショップのベストセラーはモネやゴッホのパズル、マグカップ、カード類やエコバッグなど。