ボストン美術館で絶対見るべきおすすめ20の作品と見どころを紹介する!

アメリカ東部、マサチューセッツ州ボストン市観光の目玉中の目玉、決定版はボストン美術館 (Museum of Fine Arts, Boston 略称MFA) 。

 

どこがどうすごいのかはこちらにもう書いてしまいました。

 

hitomi-shock.hatenablog.com

 

 

有名な作品、みどころなど。

 

 

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(…絵が四角でなく、台形に映っている。あまりにお見苦しいため、以後パブリックドメイン画像でお届けします。)

 

ラ・ジャポネーズ (着物をまとうカミーユ・モネ) 1875-76 クロード・モネ 

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 フランス印象派の日本への傾倒を示す絵として名高い。近年修復され、日本でも展覧会が開かれこの絵がやってきて、大盛況だったのも記憶に新しいところ。

 

 はるばるアメリカまでやってきた甲斐あって、本来の展示、ボストン美術館では、待ちなし。行列なし。順路なんかないから、一目散にお目当ての絵に向かって、じっと見ていてもかまわない。歴史に残る名画名作をさくっと1日でまとめて鑑賞できちゃう。

 

そして画像では決してわからない。まず絵が大きい!額こみでかるく一畳くらいあります。そして各々の絵の質感やタッチ。生々しさと臨場感はやっぱり実物を目の当たりにしなければ。この絵も、上下の画像を見比べていただきますと、着物の武者絵のあたりの重量感。微妙に違うでしょう。緞帳のように重厚な和刺繍を、てりも輝きもそのままに、異国のモネが見事に表現していることにうならされます。実物はもっと、絢爛豪華だった!

 

睡蓮 1905 クロード・モネ

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ボストン美術館のモネのコレクションはフランス以外ではNO.1。印象派のどこが新しいかって、モノは光と影で時に色を変え、移ろう。その瞬間を閉じ込めた。モネの睡蓮の絵は200枚以上あるそうです(1897年ごろから30年近く同じ主題で書き続けた)。水面に映るのは雲?木の陰?曖昧に広がりゆく睡蓮の葉と花が続き連なる。

 

ルーアン大聖堂(太陽の効果)1894 クロード・モネ

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ルーアン大聖堂(正面・夜明け)1894 クロード・モネ

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 「ルーアン大聖堂」は全部で33枚。うち2枚がボストン美術館所蔵。「睡蓮」シリーズより少し前。1892~94年にかけて集中的に描かれ、モネ中期の代表作の一つです。水蓮が水面ならルーアン大聖堂は大聖堂というモチーフで、満ちる光が刻々と移りゆくさまを捉えた。印象派ならではの着眼点。

 

印象派は、登場した当時はアバンギャルド。新しいものは斬新すぎてえてして世間には受け入れがたい。初めはバッシングの嵐だった。しかし、見抜く目を持つ人たちは確かにいて、ニューヨークの個展での大成功に始まり(新大陸アメリカは新しい価値観を受け入れるキャパシティを持っていた)、その後各地で個展を重ね、今日の印象派の人気があります。

 

我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか 1897-8 ポール・ゴーギャン

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ゴーギャンの代表作であり、畢生の大作と言って差し支えない。ボストン美術館の誇るお宝の一つ。展示も壁一面。(実物は大きい…139.1cm×374.6cm)

この絵、向かって右から左に見る。右は赤ん坊。真ん中、両手を上げ上を向く人物が青年期、そして左端が老婆。人は生れ落ち、老いて死ぬ運命から逃れることはできない。ブルーグレイを基調にした色づかいが深淵を感じさせ、この絵を描き上げた翌年世を去るゴーギャンの精神世界を現わしている。と言われている。20世紀、印象派を経てキュービズム・フォービズムが隆盛を極める、さきがけとなった作品。

 

 ペイルレ渓谷 1889 フィンセント・ファン・ゴッホ

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1889年、ゴッホはフランス南部プロヴァンス地方の精神病院に入院したころに書かれた絵。灰色の荒々しくも生々しいタッチは、機会があればぜひ、生でご覧ください~。この「ペイルレ渓谷」も世界中に3枚、あるんだそうで。現地サン=レミには、「ゴッホはここでこの絵を描きました!」の看板!?プレートが町のそこかしこに立っているのだそうです。

 

郵便配達人ジョゼフ・ルーラン 1888 フィンセント・ファン・ゴッホ

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 ルーラン夫人 ゆりかごを揺らす女  1889  フィンセント・ファン・ゴッホ

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このお二人、ご夫婦なんですね。サン=レミに移る前、アルルでのゴッホのご近所さん。ゴーギャンとの共同生活に疲れ、耳を切り落としたり幻覚に悩まされているゴッホの面倒を見てくれた、心優しい隣人でした。ゴッホといえば、どうも人との距離をつかむのが苦手らしい、今なら別の病名がつきそうな人、とのイメージがあります。そのゴッホが心を許し、ご主人の絵は4枚以上、奥様の絵は5枚。確認されています。

 

世界の名画を見ても見ても終わらないのは、…天才って、多作なんですね~。描いて描いて描きまくってるんじゃないのか…。

 

奴隷船 1840 ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

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イギリス ロマン派の風景画家ターナーと言えば、静謐感あふるる風景画を描く人、とのイメージがあるのですが、この絵のなんと激しいこと。

それもそのはず、この絵は1781年の奴隷船、ゾング号の残虐非道事件を題材にしています。奴隷を乗せ、アフリカから出航したゾング号。人間を荷物扱いし、船内には疫病が蔓延。船長は奴隷133名を、手と足をつないだまま、海に投げ捨てた。そして「荷物」の保険金を請求したが「管理不行届」で請求は却下された。とのどこからどこまでもむかつく一部始終に怒り狂ったターナーが描き上げたのが、この絵。

水平線の太陽は燃え、波は高い。それでも船は進み、船跡の荒々しさ、沈む人々の絶望と絶叫と悲哀。。。

インパクト強し。今回のボストン美術館紀行で、一番感動したのは、この絵かも。

 

種まく人 1850 ジャン=フランソワ・ミレー

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ブランスバルビゾン派の巨匠、ミレーの代表作の一つ。有名な絵です。この絵もボストン美術館の至宝。神様だの神話だの名勝ではなく、農民を描いた。土とともに生きる人間のダイナミズムと静寂。そしてこの絵は聖書の題材がベース。キリストの教えを種まき伝え、やがては豊かに実を結ぶとのメッセージも込められているのです。

「種まく人」は世界に2枚。もう1枚は、日本の山梨県立美術館に展示されています。

 

以上、ガイドさんが「この絵はここにあります」とパンフレットに書き込んでくださった絵のご紹介でした。つまり、ここまでがダイジェストツアー。ゴーギャン・ゴッホ・ミレー・モネ・ターナー。1~2時間で一挙に目にすることができる!!!しかも各室、お客さんはせいぜい20~30人!!!お得感果てしない!!!

 

しかしこれで終わるのも惜しいので…さらに続けさせていただきます。

 

犠牲(旧約聖書)1626 ピーテル・パウル・ルーベンス

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イエス・キリストがすべての人の罪を引き受け、十字架にかけられるまで、人々は神様に命の捧げものをしなければならなかった。子羊は祭壇に備えられ、剣を持った男は神に忠誠を誓い、加護を祈るのです。

 

修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像 1609 エル・グレコ

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この絵、日本で大々的にグレコ展が開かれたとき、来ているのですね。「良かった!」との声多数。グレコといえば祭壇画がまず頭に浮かぶ。青だの黄色だのの衣を着た人や天使が空を仰いでポージング…そして画面上部には輝く光と天使たち、と芝居がかった印象がある。そしてこの絵の何とさわやかなこと。強靭で繊細なイケメン(神に仕える方にこんな言い方していいのかしら)の外面と精神に、鑑賞する皆さまは心洗われたのでしょう。

 

カルロス皇子と侏儒 1632 ディエゴ・ベラスケス

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バルタサール・カルロス・デ・アウストリアは、ベラスケスの絵ですから、スペインの王子さま。かの「ラス・メニーナス」のマルガリータの、母親違いのお兄さん。1929年ですから、この絵に描かれているのは2~3才のころ。小さい子だけが持つ、ぷっくりしたほっぺに、つぶらな瞳の愛くるしさ。このいたいけのない子は、未来は国をしょって立つのです。「侏儒」とは小人のこと。(とは言え、ご学友ならぬ遊び友だちにしか見えないのだが…)左手のリンゴ、右手のガラガラが未来の王の球と笏を暗示します。しかしカルロス皇太子は、天然痘でわずか16才で早逝します。

 

チャールズ一世の娘、王女マリー 1637 ヴァン・ダイク

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 ヴァン・ダイクはルーベンスの弟子。巨匠と一緒にいても後塵を拝するだけ。と心機一転、イギリスに渡り、持てる才能を存分に開花させた。フランス、ルーブル美術館所蔵「英国王チャールズ1世の肖像」はフランス国王の我こそは絶対無二の君臨者、自分大好きとは真逆の自然とともにある国王のさりげない振り向きショットなんか、絶妙。

王女マリー、メアリー・ヘンリエッタ・ステュアートはチャールズ1世の長女。このとき6~7才。自分の運命に立ち向かうかのように、子ども服ではない。大人の女性の服装です。マリーは10才でのちオランダ総督となるウィレム2世と結婚し、19才で夫を天然痘で失い、未亡人となります。そして29才で、夫と同じく天然痘で、世を去るのです。

 

ブージヴァルのダンス 1883 ピエール=オーギュスト・ルノワール

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世界は美しく、人生は味わい深い。真正面から言い切るのは大人の身、いささか恥ずかしい。しかしルノアールの頬染めた女性の絵を見ていると、無条件にこの言葉が浮かんできます。ブージヴァルは地名。格式ばらず、市民が憩う川辺で、恋人たちは踊るのです。ピンクの、赤の縁取りのドレスに、赤い帽子。男性も、おしゃれして。男性は恋する人に顔を近づけ、女の子の心はきっと、もう決まってるんだわ。今目の前にあるものが美しいのです。

 

赤い肘かけ椅子のセザンヌ夫人 1877 ポール・セザンヌ

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セザンヌは印象派から出たが印象派にとどまらず、のちの20世紀の絵画の流れを先取りした色彩の魔術師。画家が惚れる画家。ピカソもマティスもモンドリアンも、ルーツをたどれば皆セザンヌ。絵でしか表現できない世界。1枚の絵の中にねじまげられた空間があったりする。絵は見えたままでなく、何があってもいいのだ…。って方ですから。この絵はまだ初期のセザンヌ夫人ですし、セザンヌ夫人、オルタンス(書かれた当時は内縁、のち入籍)さまの表情がいささか固いのも。気にしない。色遣いと全体の調和を見せていただきましょう。

桟敷席にて 1878 メアリー・カサット

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 いい絵ですねえ。思わずため息出ちゃう。アメリカが誇る印象派の女性画家、メアリー・カサット。「母子像のカサット」とか言われており、19世紀後半のフランスとアメリカに降り立ったラファエロであり、喜多川歌麿であり、上村松園です~。王女様のきらびゃかな絵じゃなくて、普通の人の日常生活に題材を取った柔らかな温かな女性像は、心に染み入り、余韻に浸れる。

この絵は、ドラマティック。桟敷席の女性は黒づくめ。片手に扇子を握りしめ、オペラグラスで舞台を見つめ、正面の紳士は身を乗り出して貴婦人を見つめる。を同時に見通す、第3の視点。絵の壮麗な舞台装置と息詰まる瞬間と貴婦人の肌と表情。

 

メンカウラー王と王妃の像 紀元前2490–2472

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1905年から1942年まで続いたボストン美術館とハーバード大学共同発掘調査隊がエキプト、ギザで1910年に見つけたお宝。1911年にエジプト政府より正式に寄贈。メンカウラー王の在位は紀元前2532年から紀元前2504年。夫人は2人いて、どちらがこの像なのかは不明。石造です。一見して固い。ギザのスフィンクスなんか、風化しているのに。そして傷一つない。奇跡です。古代の人はどうやってこの超固い石を刻み、王の威厳に満ちた表情と王妃のアルカイックスマイル、二人の滑らかな肌を掘り出したのでしょう。夫婦は共に一歩を踏み出し(エジプトでは普通男性は左足を前に出し女性は足を揃えるだそうですがこの像では一緒)頭巾とあごひげはファラオの印。王妃は王の腕と腰に手をまわししとやかに寄り添う。

 

そして忘れちゃいけない。

吉備大臣入唐絵巻 平安時代

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日本にあれば即国宝です。奈良時代、吉備真備が遣唐使として唐に渡った。その才をねたまれ、さまざまな無理難題を吹っ掛けられますが、スーパーマン真備は異国の地で故郷を懐かしみつつ世を去った阿倍仲麻呂の亡霊の力を借りて快刀乱麻、鮮やかに難局を切り抜け、見事帰国を果たす。図録持ってるんですが、手に汗握ります~。1932年、このお宝がボストン美術館の手に渡ったことを知った日本政府は、あわてて「重要美術品を国外に出すことはまかりならん!!!」の法律を作った、とのいわくつき。このクラスになりますと、常設展示とはいかない。同じ人が描いたとされる「伴大納言絵巻」は当然国宝。東京出光美術館蔵です。どちらも狙って行って、極めてみたい!

 

平治物語絵巻 三条殿夜討巻(鎌倉時代)

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 こっちだって日本にあれば国宝ですよ。まったく、なぜアメリカにあるのだ。

平安末期、武士の時代の始まりを告げる源氏と平家の争い。この絵巻物は保元の乱・平治の乱の平治の乱(1159)の方を100年後に描いている。御所三条殿を源氏が襲う!燃え盛る炎、逃げ惑う人々、敵の首を討たんとなだれ込む甲冑の群れ…他2巻は東京国立博物館(国宝)と静嘉堂文庫蔵、1巻は分断されていろいろなところにある。他は散逸してしまった…。全15巻くらいではなかったか、と推測されています。残っているもののうち、NO.1は文句なく、ボストン美術館所蔵!

 

まとめ

今回の紹介はカサットだけになってしまいしたが、アメリカの美術館ですから、アメリカ美術・南アメリカ美術にも相当のスペースが割かれており、現代アートのブースにも力入ってます。そして日米以外の言語でボストン美術館の検索かけますと、各国が目をつけた自国のお宝などもわかって面白かった。所蔵品は膨大。2日間通いました。できれば、もう1週間、時間が欲しかった!機会があればぜひ!そして時間を作って美術館のためだけにボストンを訪れるだけの価値ある美術館です。

おまけとしてパンフレットの画像、楽器の展示室の写真、入館情報など。

 

おまけ

ボストン美術館の日本語パンフレット

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楽器室

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外観とエントランス

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前庭にいたガチョウ。

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入館情報
  • 入館料は25ドル。10日間有効なので、半券を持っていけば10日間、入館無料。65才以上と18才以上の学生は23ドル、17才以下無料。
  • 開館は木曜日・金曜日のみ10時~22時。土曜日~水曜日は10時~17時。ただしアメリカの祝日は休館日になることもあるので、事前に確認を。
  • ツアーガイドのヘッドフォンは5ドル。端末操作して日本語バージョン選択可。ただしバッテリーがたりないこともあるので、事前に確認を。(見学中、交換場所に戻るのは時間とエネルギーが勿体ない。)ただし日本語の解説のある作品は限られる。
  • 休憩場所は展示スペース、ホール等に数多くある。初日は時差ぼけもあり、ソファでバッグを胸に抱き、お昼寝してしまった。つまり、安全。身の危険とかはまずないが、外国であることを忘れず、自分の身は自分で守ること。
  • 屋外に日本庭園の「天心園」がある。ここは入場無料。
  • レストランとカフェあり。
  • ミュージアムショップの図録は、日本語版は見つけられなかったものの、ジャンル別の図録がシリーズで出ていて、自分の好きな本だけ選ぶことができるので、その点、便利。
  • 帰り、タクシーを拾うつもりで、ガイドさんは、「いつも何台かはいますから」とのお話でしたが、夕暮れ時、美術館を出るとタクシーは影も形もなかった。大通りに出れば、タクシー、拾えます。

  また、思いついたら、追記していきます。